実は、ほぼ全てのスポーツ選手には糖質制限は向いていません。もちろん、趣味の範囲でスポーツや筋トレを楽しんでいるあなたにも当てはまります。
「痩せたい」「身体を絞りたい」がために自己流で糖質制限に取り組むと、身体が動かなくなってパフォーマンスが落ちたり、筋肉量が減ってしまうなどの悲劇が待っています。
「いやいや、でもライザップは糖質を控えた食事と筋トレで痩せるんだよね?」と糖質制限ダイエットへの希望を捨てきれないアスリートも居るかもしれません。
そこで、ここではスポーツ選手が糖質制限をしてはいけない根本的な理由を、超わかりやすく解説しています。
目次
前提で知って欲しい2つのこと
糖質制限がスポーツ選手に向いていない理由を見ていく前に、最低限知っておきたいことが2つだけあります。
少し専門的な内容なので拒絶反応(笑)が出る人も居るかもしれませんが、これを知らずして糖質制限は語れないので…。
かいつまんでポイントだけ見ていきましょう。
ヒトのエネルギー回路は3つある
とうぜんの話にはなりますが、スポーツとは身体を動かすことですね。そして、身体を動かすにはエネルギーが要ります。
ヒトは3種類のエネルギーを出す手段を持っていて、これを運動強度や栄養状態に合わせて切り替えて使っています。
別に覚えなくて良いですが、専門用語でこう言います(+_+)
糖質の代謝→解糖系
脂質の代謝→ケトン体回路
タンパク質の代謝→糖新生
「なんか見覚えあるなぁ」って人もいるかな?まあ秒で忘れて次いきましょう(笑)
こんな動作のときにこの栄養素を使う
大体ですが、ヒトは以下のパターンで糖質・脂質・タンパク質の3つの栄養素を切り替えて身体を動かす力にしています。
- 「歩く」などの心拍数が全然上がらない運動のとき
- 「50m走」「ジャンプ」「筋トレ」などの高強度で一瞬で終わるような運動のとき
- 「400m走」などのある程度キツく持久力も必要な運動のとき
- エネルギー(糖質・脂質)が不足状態で、どうしてもエネルギーを捻出しなければならないとき【非常時】
→脂質
→糖質
→脂質・糖質
→タンパク質
ハイブリッド自動車を思い浮かべると理解しやすいです。アクセルはガソリン・走行中は電気にエネルギーを切り替えていますねが、これがヒトの場合だとアクセルが糖質・走行中は脂質になります。
さて。ここまで前提を見てきたあなたには、もう「スポーツ選手が糖質制限をしてはいけない理由」が見えてきたのではないでしょうか?
殆どのスポーツ選手はエネルギーとして糖質を使うので糖質制限はNG
スポーツ選手が当然のようにする瞬発的な動きや走るという動作そのものに、糖質は使われるので、必要です。
☑走ったりジャンプしたり強い力を出すスポーツ選手には、糖質が必要
例外的にスポーツ選手でも糖質制限が有効な場合もある
中には糖質制限にベネフィットがある場合も例外的にあります。
ズバリそれは、見た目だけ競うスポーツをしている場合か、短期間で体重を落としたい場合の2つです。
見た目だけ競う競技をしている場合
ボディビルやフィットネスビキニなどの見た目だけを競うスポーツなら、糖質制限はプレーに問題が出にくいです。
瞬発的な動きを全くしないので、競技中に糖質をガンガン消費するという状況にならないことが理由。
とはいえ、トレーニング時は高負荷の筋トレをするので、やはり一般人以上の糖質量は必要になります。
どうしても短期間で体重を減らしたい場合
ボクサーや柔道家などの体重別競技で「計量に引っかからないためにどうしても短期間で体重を落としたい」場合にも糖質制限は有効。
糖質を1~2日抜くと1.5kgは体重を減らすことができます。
でも、これは痩せたわけではなく減ったのは水分。筋肉にガソリン源として貯められている筋グルコース(糖)は、1gあたり3-4gの水分を一緒に保持しています。
糖質をカットすると、身体はこの貯められた筋グルコース(約300g。人による)をエネルギーとして使います。つまり、このとき保持していた水分も体外へ出ます。
筋グルコース(300g)+それを保持する水分(900-1200g)が、糖質制限で一時的に無くなるので、一気に1.5kgくらいは体重が減るのです。
まあ、これはもう非常事態に使う方法。体重にシビアでない競技のスポーツ選手にとっては全くベネフィットが無いので、基本的にやらないようにしてくださいね。
一般的なアスリートがもし糖質不足になると、何が起こるか
冒頭でチラッとお話ししましたが、明らかにスポーツのパフォーマンスが落ちます。例えば、以下のような不調が起こります。
- 手足が瞬発的に動かなくなる
- 持久力が落ちる
- 注意散漫になる
- 大量のタンパク質・脂質のせいで胃もたれがハンパなく、競技中もお腹が重いのが続く
どうでしょうか?どれか一つでもなってしまったら競技どころではありませんね。
マラソン・サッカー・テニス等の持久系スポーツをしている人は、試合後半に息は大丈夫なのに脚が急に重たくなる現象になったことはありませんか?
あれも、身体の糖質のストック(筋グリコーゲン)が足りなくなって起こる現象です。
・・・糖質は大事ですね。
スリープロー(Sleep-low)という食事法があるが…
2016年に長距離種目の選手を対象にした研究で、糖質を摂るタイミングを工夫して、ケトン体回路をうまく使わせたことで、トライアスロンの模擬レースのタイムが3%速くなったというものがありました。
これはスリープロ―(Sleep-low)法と言われ、長距離種目の選手に大きなメリットがある方法ですが、筆者は積極的にはおすすめしていません。
なぜなら、現実的には、研究と同じような条件でトレーニングや食事をするのは難しいから。専門家の元ならできるでしょうが…。
自己流スリープロ―法が原因で、トレーニングや食事の質が下がってしまったらそれこそ問題。
自分ができる範囲でできることをやり、できないことは中途半端にやらないのはトレーニングの鉄則です。